留年百合小説アンソロジー ダブリナーズ
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(*今回は第一次予約分となります。予約受付は5月15日まで) (*初売りは5月19日の文学フリマ東京[予価:2000円]です) (*発送は5月20日以降となります) 百合――それはふたりの時を留める愛のマジック。 留年――それはあなたの時を止める奇跡のメカニック。 このふたつが出会ったとき、運命が動き出す。 文芸同人サークル〈ストレンジ・フィクションズ〉が贈る番外編的オリジナル百合小説合同シリーズ第三弾、今回のテーマは〈留年〉です。 表紙イラストに『またぞろ。』(まんがタイムKRコミックス)の幌田先生を迎え、前回(声百合アンソロジー)からぐ〜んとボリュームアップの200p越え! 本邦に史上類をみない、至高の留年百合アンソロジーが完成しました。 なお、本アンソロジーから生じた利益は2024年に発生した能登半島沖地震への寄付に提供される予定です。 【収録作&あらすじ紹介】 「全然そうは見えません」(作:笹幡みなみ) 二度目の春を始めたさくらは、推敲し続けて出せないメールとつきまとう幻を見ないようにしながら、大学一年生をやり直す。これまで一度の春もなかった渚は、傘に入れてもらったことをきっかけに、さくらにある期待をしはじめる。失敗しても不格好でも、堂々誤魔化せ決めポーズ。 「海へ棄てに」(作:紙月真魚) 古馴染みの海まで歩いて、要らないものでも棄てにゆこうよ。空き瓶、道徳、混みいる感情。うまく投げれば跳ねるかな。※単位と未来は自棄で投げない。ゆく道すがら歌でも歌いつ:ノキ・ノキ・ノキノン・ホニャララ・ドア……。駅から川沿い、葉桜の道をのんびりてくてく。道草・寄り道おおいに歓迎。どうせ最後の自由時間、エンジョイしなけりゃ意味ないね。──そういや先輩、どして休んでたんですか? 「still」(作:鷲羽巧) “STILL”――まだ、じっとして、それでもなお。留まりつづけるわたしから、去ってしまったあなたへ宛てた、幾つかの断想。 「切断された言葉」(作:茎ひとみ) 【彼女】【燃やしちゃおう】 姉の結婚式に出席した乃梨子は、余興の思い出ムービーのなかに「塔子」を見つける。実の姉妹以上に、一緒だったはずの二人が離ればなれになるまでの記憶。そして、古い記憶との邂逅が二人の魂を再びシンクロさせる。 「ウニは育つのに五年かかる」(作:小野繙) 四歳の夢野まほろは、大好物のウニ軍艦を食べて失神する。その際に「オホーツク海を見渡せる小屋でメスのウニを育て、熟した卵巣を啜らなければならない」という天啓を得た夢野は、担任と母親とのサイコロ勝負を制して北大へと進学し、そこで出逢ったウニ頭の美里に一目惚れをする。まほろは美里目当てで美里の所属する映画サークルに加入したものの、美里の目はサークル部長で美里の高校同期でもある小春に向けられていた。 「不可侵条約」(作:murashit) ひとりで飲んでいるといろいろなことがあります。居酒屋があって、客体があって、別れ話があって、留年があって、劇場があって、思い出話があって、レバ刺しがあって、沖縄があって、惚気話があって、主体があって、外で雨が降っているのかはわからないままでした。 「パンケーキの重ね方。」(作:孔田多紀) 高校軽音部の安藤響子はある日、メンバー四人中二人が同時に退部するとの知らせを聞く。このままでは自分も活動できなくなるのではないか。もう一人のメンバー九連爛柯と学食のパンケーキを囲み対策を考えるうち、響子はパンケーキに魅惑されてしまう……。今回は蘇部健一『六枚のとんかつ』のトリビュートに挑戦してみたのですが、さて元の短篇はなんでしょう。当ててみてください。 「春にはぐれる」(作:織戸久貴) 「これから十五回の講義で、わたしはヘルマン・ヘッセの和文を全暗記するんだ」高校時代の有名人、ピンク髪先輩こと潮木るりか先輩は大学の講義で再会したわたしにそう告げた。ドイツ語応用。必修科目。春秋合わせて四単位。しかしその計画は、彼女が講義に出席しなくなることで頓挫する。終わりゆく世界で留年すること、あるいは留まりつづけること。ねえ、先輩。わたしが神様だったら、こんな世界は作らなかったよ。